「そんなのダメだよ。前例がないじゃないか」「それはうまくいかないな。前例がないもの」「認めるわけにはいかない。前例がないからね」……
新しく何かをしようとするとき、こんなふうに行動を制限されることがあります。その理由は「前例がない」から……。
別に法に触れたり、莫大なコストがかかったりすることをしようとしているのではありません。ただこれまでやろうとしなかったことを「やってみたい」と思っただけのことなのに「前例がない」という理由で門前払いをされるのは、あまりにも理不尽です。
この「前例がない」は、もっともらしい口実です。言われたほうも「そういういものかな」と納得しがちなので、「葵の印籠」のような効果があります。
よくよく考えてみると、とてもおかしなことです。そもそも新しいことをするのですから、「前例がない」に決まっています。それがうまくいくかどうかは事前にはまったく分かりませんが、ゼロではないはずです。「前例がない」は、何かをやめさせる理由にはなり得ないものです。
突き詰めて言えば、その前例はあくまでも過去の基準にすぎません。今この瞬間まではやったこともうまくいったこともなかったのは、事実です。
今この瞬間からは違います。その新しいことをやってみれば、前例が1つできることになります。うまくいけば、成功事例にさえなります。
「前例がない」と言われて、スゴスゴと引き下がっていては、いつまで経ってもその状態は続きます。それでは新しいものが何1つ生まれなくなってしまいます。
「前例がない」と言われたら、言うべきことはただ1つ。それは、「私がその前例になりますよ」です。
今この瞬間に、あなた自身がスタートさせてしまいます。そうすれば、もはや「前例がない」状態は解消できます。
前例とは、後生大事に守るものではありません。過去においては、似たような事例がなかっただけのことです。
破るためにある――。それが、前例です。その前例を破るのは、もちろん、あなた自身です。