組織に所属する人全員が、同じ方向を向いている――。これはカンタンなことのように見えますが、かなり難しいことです。
放っておくと、違う方向を向く人が出てきて、全員が1つの方向に向かって歩むことができなくなります。
また自分では「同じ方向を向いている」と思ってはいても、実際にはまったく違うところを見ていたりする人が出てくるものです。
なぜ違う方向を見る人が出てきてしまうのかと言うと、原因はいろいろ考えられます。大まかに言うと、それは2つあります。
1つには、方向をしっかり示していない。上に立つ人がなんとなく「こっち」と示しているだけでは、組織にいる人全員がどの方向を見ればいいのか認識できません。こういうケースは、想像以上に多いものです。
「われわれはここを目指している」「進むべきなのは、こっちだ」……
そんなふうにハッキリ示さなければ、組織にいる人全員が同じ方向を共有できません。「言わなくても分かるだろう」と思っているとすれば、上に立つ人の「怠慢」と言い切ってもいいくらいです。
もう1つは、組織に所属する人がどこを見たらいいのかを忘れてしまう。念のために言っておきますが、「忘れっぽい」からではありません。
毎日毎日、処理しなければいけない案件を抱えて、それに取り組むだけで精いっぱいという状況に置かれてしまうと、目先のことしか考えなくなってしまいます。忙しさのあまり、ついつい目指すべき方向性を見失っていきます。
これは、組織にかかわっている個人の問題ではありません。そういう環境にしてしまった、上の人の問題です。
商売繁盛して処理する案件が多いのなら、なおのこと方向性を見失わない環境をつくる必要があります。それは、上の人が解決しなければならないことです。
毎日の朝礼、せめて週に1回のミーティングなどで、「われわれはこの方向性を目指している」と訴えていくべきです。
そうした地道な取り組みをしていれば、忙しさに追われている人も、「こっちに行くんだ」と、目指すべき方向を忘れなくなります。
いつでもどこでもどんなときでも、誰にでも分かるように方向性を示している――。それは、成長する組織が欠かしてはならないことです。