仕事であれプライベートであれ、何かがうまくいっていないときは、どうしても自分のことで精いっぱいになってしまいます。それは、独りよがりになっていること。
「このままではどうにもならない」「もっと頑張らないとダメだ」「徹底的にやるしかない」……
うまくいかない現状を脱出しようとして、一生懸命になっているのは、周りの人もよく分かっています。「うまくいってほしい」と願ってもいます。
本人にとっては、その周りの視線が重荷にも負担にも感じられます。
「同情されている」「バカにされている」と、卑屈に感じてしまう人も少なくありません。その周りの視線は、冷ややかなものとも、また軽蔑したものとも異なります。
あえて声をかけずにいるのは、大人のやさしさです。うまくいっていないからこそ、手を貸そうとしません。
その証拠に、本人を見つめる眼差しは、誰もが温かいものです。「冷ややか」に感じているのは、本人だけ。
そのことに気づかないのは、もったいないことです。周りの視線を冷たいものだと感じてしまうと、ますますネガティブになっていきます。
卑屈なままでは、何をやったところでうまくいくはずがありません。
周りの人は、うまくいかない人を笑っているのでも関心がないのでもなく、ただ温かく見守っているだけ。あえて声をかけずにいます。
「こうやるといいよ」「ここはこうすればいい」「こっちのほうがいい」……
そんなふうにアドバイスしたいのに、それをグッと押さえています。なぜなら自力で乗り越えてほしいから……。
気づかないだけで、陰ながら「頑張れ!」と応援してくれています。その実感が持てると、不思議と気持ちがポジティブになっていきます。
「応援されている」と実感すると、うまくいかないことが続いても、「何度でもやり直そう」「うまくいくまでやればいい」というように、行動が積極的になります。
周りのやさしさに気づいたとき……。それは、ひと皮むけた証拠。
うまくいかなくてもがき苦しみ、ひと皮むけていく……。
そんなことを繰り返していって、人は大人になり、ものごとをうまく処理できるようになっていきます。