ビジネスで成功するためのカギは、数えきれないほどたくさんあります。その1つが、「先憂後楽」です。
この言葉は、人々が将来を心配する前に憂いて、人々が楽しんだあとに自分も楽しむべきだという為政者の心得として説かれたものです。それが転じて、「先に苦労をすれば、あとでラクができる」という意味でも使われています。
どんなものごとにも言えますが、大変なのは「始めたとき」です。やり方も分からなければ先も見えませんから、結果を出すためにずっと試行錯誤を強いられます。
苦労続きは、当たり前。「苦労をすれば必ず結果が出る」というものでもないですが、それでもその大変なことを繰り返すから、ものごとがうまくいくようになります。
苦労するのがイヤだからと言って、ラクばかりしていたら、停滞続き。大変なこともない代わりに、ものごとはずっとうまくいかないまま。
いいえ、時間が経てば経つほど、状況はドンドン厳しくなっていきます。それは、今ラクをすることで、あとあと苦労することを意味します。
今、ラクをして、あとで苦労する。今、苦労して、あとでラクになる。結局のこのどちらかに収斂されます。
それならば、今、苦労をして、あとでラクになったほうがいい……。先憂後楽という言葉には、そんな意味も含まれています。
ただし、ビジネスにおける「先憂後楽」は、もっと深い意味が隠されています。それは、「主語が違う」ということ。
今、苦労するのは、当然のことながら、商品やサービスを提供するほうです。その一方で、あとでラクになるのは商品やサービスを提供する人たちではありません。
ここまで書いてきて理解できた人も多いはずですが、それは商品やサービスを利用するほうです。言い換えれば、お客様。
ビジネスでの先憂後楽とは、お客様があとでラクになる(ラクをする)ために、提供する人たちが今、苦労することです。
これを徹底していれば、どんな商品・サービスを提供するとしても、また時代や環境がどんなに変わっても、うまくいきます。
お客様のために苦労をする――。それが、ビジネスの本質。それを言葉としてまとめたのが、「先憂後楽」です。