電車で移動中に席に座っていたあなたは、疲れがたまっていたのか、いつしか寝てしまいました。「ハッ」と目を覚ましたときは、まだ目的地から半分のところ。
ふと前を見ると、目の前には、立っている人がいます。しかもそれは、お年寄りです。
「席を譲ろうかな。いや、このところ残業続きで疲れているし、目的地に着くまでまだ時間があるし、もうちょっと眠っておこう……」
そう判断して、あなたは再び眠ってしまいました。目の前に、立っているのがつらそうなお年寄りがいることに気づかないフリをして……。
目的地に着くちょっと前に目を覚ましたあなたは、お年寄りがいないことに気づきます。どうやら途中のどこかの駅で降りたようです。
「よく眠って、疲れがとれた。寝られてよかった……」
少し安堵して、クライアントのところに向かいます。
駅を降りて相手先に向かう途中、目の前には道に迷ったらしき人がいます。その人は、地図を片手にウロウロしています。
このあたりはよく来るので、それなりに土地勘はあります。もっとも、クライアントとの約束の時間ももうすぐ。
気づかないフリをして急ぎ足をさらに速めて、その人を素通りしていきます。だいぶ離れたところから後ろを振り返ると、その人はまだどちらに行っていいか分からず、ウロウロしているようです。
目の前に困っている人がいるのを見たら、「なんとかしよう」と思うのは人として当然の気持ちです。自分にできることは少なくても、「大丈夫ですか?」と声をかけることくらいはできます。
困っている人をそのまま放置するのは、よくないことです。ましてや気づかないフリをするのは、最悪。「疲れている」「急いでいる」は、理由になりません。
「私にできることなんかない」と思うのも、傲慢です。誰かが困っているときは、そのときの自分ができることをできる範囲で精いっぱいするものです。結果として役に立てなかったとしても、それはそれで構いません。
情けは人のためならず。あなた自身ができることをしようとすれば、困っている人も勇気づけられます。
全面解決しなくても、「助けてもらえる」と思うことで、相手も安心します。それだけでもあなたが「大丈夫ですか?」と声をかける意義があります。