日本人のコミュニケーションの特徴の1つが、「あ・うん」の呼吸です。
わざわざ言葉に出さなくても、目と目で通じ合う、あるいは態度を観察することで、相手が何を考えているか、どういうことをしようとしているかを、瞬時に理解できてしまいます。お互いに過不足なくコミュニケーションしていきます。
「これはどうなのかな?」「こっちのほうがいいかな?」……
いちいち確認しなくても、「これだな」「こっちだな」と素早く察して、相手の求めているとおり、場合によってはそれ以上のものを提供するので、コミュニケーションのコストもロスもありません。
ある意味では、最強のコミュニケーション――。それが、「あ・うん」の呼吸です。
もっとも、価値観が多様化しグローバル化が進んでいくと、年齢も国籍も性もバックグラウンドも異なる人が集まるようになります。そうした多種多様な人たちが一緒に行動するとなると、「やはり言葉によるコミュニケーションをしていくしかない」と考える人はたくさんいそうです。
あなたも、その1人かもしれません。
結論から言ってしまうと、それは、「NO」です。「あ・うん」の呼吸によるコミュニケーションに勝るものはないし、それは年齢や国籍、性、バックグラウンドが異なる人との間でも成立します。
ただし、条件が1つあります。それは、核となる価値観や信条、あるいは理想といったものが共有されていること。
核を共有している者同士であれば、「あ・うん」の呼吸は、しっかり成立します。目と目を合わせただけで、あるいは態度を見ただけで、相手が何を考えているか、どういうことをしようとしているか、一瞬で察することができます。
お互いに核となるものを共有している限り、言葉に出さないコミュニケーションは、可能です。
それではまったく言葉がいらないのかと言うと、それもまた違います。
価値観や信条、理想といった核をズレやモレなく100%共有するまでには、言葉によるコミュニケーションは必須です。カンカンガクガクの議論も、避けて通ることはできません。
そうした徹底した言葉によるコミュニケーションを経て、核を100%共有できれば、そこから先は大丈夫。「あ・うん」の呼吸でしっかり連携できます。
言葉によるやりとりをしない分、速く正確にコミュニケーションすることになります。