十分な準備をしたにもかかわらず、鳴り物入りの新規事業を軌道に乗せることができず、撤退してしまった。資格をとろうとして何年も勉強してきたのに、合格できずに悔しいながらもあきらめることにした……。
時間もお金もかけて、頑張ってある１つのことに全身全霊をかけて取り組んだのに、成就しなかったとすれば、残念無念。悔やんでも悔やみきれないのが、正直なところです。
その気持ちは痛いほどよく分かりますが、だからと言って、決して「失敗だった」わけではありません。それをたんなる失敗だととらえるのは、自分自身を否定することになります。
ある１つのことに全精力を注ぎ込んで取り組んだ時間やお金は、相当なものです。今さら取り戻すことは、不可能。
確かに「ソンをした」ことは、否めません。とは言え、それを失敗だったと言うのも、いきすぎです。
「あのお金が今、手もとにあればなぁ」……
そのお金があれば、ほかのさまざまなことができるのも事実。「もったいなかった」も、偽らざる本音です。
別にキレイゴトを言うわけではないですが、その時間もお金もかけたにもかかわらず成就しなかった取り組みは、「経験を買った」と見なすべきです。それが高いか安いかは、やめたそのときには判断できないものです。
成功や合格するために日夜取り組んだことは、いつまでも色あせることはありません。すぐに何かの役に立つことはないとしても、いつかどこかで、また思わぬかたちで必ず活かせるものです。
「あのときやったことは、このためにあったんだ」……
そう思える日は、必ずやって来ます。そのとき「安い買い物だった」と、感慨無量になるはずです。
うまくいかないからと言って残念ながらやめてしまったことは、失敗ではありません。
それは、時間もお金もかけた投資――。いつの日か役に立つに違いない「経験」を買ったことにほかなりません。
